
どうも、ゴールデンウィークも元気に更新の司法書士、城田です。
ゴールデンウィークも半分が過ぎてしまいましたが、いかがお過ごしでしょうか?
今年は人によっては10連休と言事で、ゆっくり休めている方も多いと思います。
しかし、先日は神戸で車の暴走がありましたように、人混みが多いからこそ、
起こってしまう悲劇もあります。
何事も自分で責任を背負える範囲で行動しなければなりませんね。
とはいうものの、世の中には自分の責任ではどうすることも出来ない財産を管理する必要が出てきます。
それが成年後見です。
今日は成年後見における様々な事例をもとに、問題を啓発していこうと思います。
この記事の目次
成年後見(せいねんこうけん)とは何?
成年後見とは、ある人が「事理弁識を欠く常況」に陥った場合に第三者がその人の財産管理や、
意思決定を代わりに行っていくという制度です。
例えば、認知症になり日常生活においての事理弁識能力が全くない人がいるとします。
その方が生きていくためには年金を受け取ったり、医者に行ったりすることが必要になるわけです。
しかし、その人はそういった事が出来ない。
それを代わりに行っていく人が必要になるわけです。具体的には、介護老人ホームへの入所手続きや、
その介護施設への支払いに至るまで、日常生活において判断しなければならない事は山ほどあります。
それなのに、介護施設にしても本人の意思を確認するまでもなく、必要な介護を行ってくれる事は無い訳です。
意思を表示することが出来ない人の代わりに、その人の利益になるように意思を表示するのが成年後見人です。
後見人には私ども司法書士のような専門家が就任する事もあれば、子などの親族が就任する事もあります。
専門家でも親族でも、後見人等になった場合には、他人の財産を自分の権限で使うことが出来るのです。
そうなりますと、時には非常に残念な結果になる事もあります。
後見人が被後見人(後見される人)の財産を自分の為に散財してしまう事例が多く報告されています。
お恥ずかしながら、新聞の紙面を司法書士が悪い意味で賑やかすに至った事例も記憶しておられる方も居ると思います。
しかし、専門家の不正は目立ちますので報道の対象になりますが、実際問題は親族後見人による使い込みの方が
圧倒的に多いと言えます。
なぜ成年後見では不正が起きるのか
最初から悪意をもって後見人に就任する方はいないように思います。
通常に後見人の職務を遂行していくにあたり、様々な誘惑に駆られたり、
自身の財産状況が悪くなったことでその誘惑に負けてしまったりという事でしょう。
例えば、本人のために動いていく中で、食事等の経費を本人の財産から支出したような事をきっかけに、
自身の車のガソリン代や自身の旅行代金など、諸々の諸費用を、本人の財産から支出してしまう事例もあるようです。
本人も共に食事をしていたり、旅行に同行していたりしてその費用の対価を享受しているのであれば、
まだ問題にはならないのかも知れませんが、自身の為のみという事になると完全にアウトでしょう。
成年後見人を申し立てなかったことでトラブルになったケース
これは、実際に相談があったケースの事例についてご紹介いたします。
事例としては、本人は認知症。
本人には2人の息子がいるが、これまでは、次男夫婦が財産管理を担ってきた。
本人には駐車場やマンションなどの収益物件があり、月に100万円近い収入があります。
往々にして、このような場合、財産管理を担っている次男は本人の財産を
わがものと同様に散財してしまうものです。
通常、認知症で判断能力がない人が生活するにあたって必要なお金など知れています。
しかし、この事例においては月々100万円を超える財産が残っていない事から、
長男からの次男に対する不信感が生まれていました。
次男は自身の使い込みを正当化するために自己を後見人とする、
成年後見人の申し立てをしたい旨を相談してきました。
しかし、成年後見人の申立については本人の親族である長男の同意書を
裁判所から求められます。
当然長男が同意するはずもありませんので、すったもんだの末、結局相談は立ち消えになりました。
このケースにおいては、成年後見をはじめから悪用しようとして申し立ての相談がされています。
最終的には成年後見の申し立てはしていませんし、恐らくできない事から、
成年後見人による不正というわけではありません。
こういった事例は潜在的にも顕在的にもかなりの数があるのではないかと思いますが、
どういった対処方法があったのでしょう?
資産や収入のない方であれば、私は正直、親族が後見人になってあげるべきだと思います。
しかし、今回のように収益物件等の収入が本人にあり、最終的に相続が起きた際に、
複数の相続人が現れることが見込まれるケースでは、初めから専門家を後見人とする
成年後見を申し立てるべきだと思います。
推定相続人の一人が財産を管理すれば、後々揉めることになるのは目に見えています。
成年後見を申し立てたことでトラブルになったケース
次も実際にあったケースです。
今回のケースでも兄弟が兄と妹の二人がおり、兄が母親とずっと同居をしているケースです。
兄は自分の住宅をローンで購入していたのですが、母親が元気なうちから、
その住宅ローンの返済は母親がしていました。
そして、その事について妹も納得をしており、それだけを聞けば問題はないように思います。
実際、住宅ローンの返済を第三者が行った場合はその部分について贈与という事になります。
そうなれば贈与税の課税の対象になりますが、年間110万円以内であれば贈与税は
課税されません。
このケースでも、税理士さんの指導があったのかどうかはわかりませんが、
110万円以内での贈与に収まっているとの事でした。
ますます問題がなさそうなのですが、母親が認知症にかかったことで事態が一変します。
今までも、兄とその配偶者が母親の財産を管理していたことから、
母が介護サービスを受けるために、兄を成年後見人とする成年後見の申し立てをしました。
その際に私どものような専門家に住宅ローンの返済の件も含めた相談をしていただければ
良かったのですが、自分たちで頑張って申し立てをしたのです。
成年後見人は一定の期間ごとに財産の状況を裁判所に報告しなければなりません。
本人はもはや自分の意思を表示することは出来ませんので、成年後見申立以後、
贈与の意思表示は出来ないのです。
成年後見を申し立てたことにより、これまで通り息子の住宅ローンの為に母親の
口座から支出をすることが出来なくなってしまいました。
成年後見人である息子が勝手に、今まで通りローンの返済のために母のお金を使う事が、
横領罪になってしまうのです。
しかし、一度申し立てた後見の申し立ては、本人の認知症が治癒しない限り出来ません。
成年後見制度という制度は基本的には片道切符に近いのです。
今まで通りにしたいという息子さんからの相談が来たのですが、
残念ながら、お力添えをすることは出来ませんでした。
成年後見に関するまとめ
両方のケースにおいて、あらかじめ専門家に相談をしていれば、
少しは違った結果になったかもしれません。
少なくとも、状況を分析したうえで選択肢を何通りか提案できたことは確実です。
成年後見というものはただ単に介護施設に入所するためだとか、
遺産分割協議をするためだけに申し立てるものではなく、
あくまで本人の財産を保護するための制度です。
その制度自体が、本人以外の関係者の足かせになる事は十分にあり得ます。
ですので、その利用にあたっては十分に考えたうえで、出来れば本人の元気なうちから、
備えをしておくことが非常に重要になります。
そういった時に、街の法律家である司法書士を頼っていただけたらとおもいます。