
日本人の保険加入率は8割を超えており、保険業界にとっては非常に大きな市場であります。
これから先の少子高齢化社会においても、年金不安などからその需要は大きくなると思われます。
また、団塊世代の相続ラッシュが始まる中で相続税対策としても非常に有効利用出来ます。
更に、保険とプラスして民事信託を活用することで、従来にはない、柔軟な財産承継をご手提供できます。
その為にも、最前線でお客様と接している保険営業の方々には是非、民事信託と保険のシナジーを理解して頂きたいと感じます。
今回は、保険と民事信託を使ってより良い相続対策をしていただけるような記事を書いていこうと思います。
この記事の目次
生命保険と民事信託の意外な関係
生命保険と民事信託は似ている?
生命保険も信託も契約であり、生命保険であれば保険契約者と保険会社との契約となり、信託であれば委託者と受託者の契約となります。
保障の対象者を被保険者と言い、この被保険者が亡くなった場合に、保険金支払の条件が満たされ、保険会社には「保険金受取人」に対して保険金の支払い義務が発生します。
そしてまた同時に「保険金受取人」には、保険会社に対する保険金の請求権が発生します。
民事信託では契約においてその信託財産を拠出するものを「委託者」といい、信託財産の管理処分をするものは「受託者」です。
そして、信託財産の管理・運用の結果発生した利益を享受するのは「受益者」と呼ばれます。
このように、契約当事者が「君と僕」ではなく、「君と僕とあいつ」になるのは生命保険と民事信託の共通点の一つです。
また、保険契約は被保険者が死亡した場合に、保険受取人に対して死亡保険金を受け取る権利が発生します。
それに対して一般的な委託者と受益者が同一の民事信託(自益信託といいます)では、当初の受益者(委託者でもある人)が死亡した場合、
二次受益者を契約段階で設定していれば二次受益者が新たに発生した受益権を取得します。
信託契約も生命保険も、死亡後に権利が発生しており、またそれは新たな権利を取得した者の固有の財産と考えることができ、
生前から実在する財産を相続人が引き継ぐ形の、民法上の承継方法である「相続」とは全く違う、別世界の承継方法ということが分かります。
保険の専門家も民事信託の専門家も似ている?
上記のように生命保険と民事信託が非常に似ているという事ですが、生命保険のプランナーも民事信託を手掛ける専門家も基本的な想いは同じといえます。
両者ともに、自分の提供できる知識や商品の特徴を生かして依頼者とその家族を守ろうとするという点においては全く同じといっていいと思います。
ファイナンシャルプランナーさんが相談をしているとき、お客様の様々なニーズを聞き取ると思います。
そういった中でお客様の口から次のようなことを聞かされることがあるのではないでしょうか?
- 一部の相続人と折り合いが悪く、なるべく財産を渡したくない
- 母に先立たれた父が再婚をしたがっているので相続でもめそうである
- 子供の為に生命保険に入りたいが、一括で支払われると浪費リスクが気になる
- 相続税対策を保険も不動産も含め一括で管理してほしい
- 現状では父親が具体的な相続対策に乗り気でないが、認知症リスクが気になる
こういったご要望に対して、生命保険だけで解決できない問題が含まれていることで法律の専門家に相談されたこともあるのではないでしょうか?
しかし、既存の民法を使った提案ではお客様のニーズにピタッとはまらないこともあり、その商談自体も立ち消えになったりするご経験もあるのではないでしょうか?
こういった悩みは民事信託を活用して頂くことで解決することができます!
生命保険と信託の組み合わせで満足を提供できる
生命保険信託
生命保険信託とは保険契約の段階で受取人となる者が幼少であるなどの事情で、
一括の保険金の支払いにリスクがある場合などの場合に保険金を分割支払いするなどの措置がとれるスキームです。
私の知る限りではプルデンシャル生命、第一生命と三井住友信託銀行が扱っています。
生命保険を生命保険で契約すると、死亡保険金は受取人の叔父に年間200万円ずつ受け取らせるなど、一度にお金が全額下りないように設定する事も出来ます。
受取人が成人したら残額全部を支払うとか、結婚したら残額全部を支払う等、多様な方法で死亡保険金を受け取らせることができます。
また、その叔父がしっかりと受取人のためにお金を使っているかを監督するものを定めておくなど、契約者の心配事を担保する契約方式をとることで、
安心して保険契約をしていただけます。
提案するプランナー側としても、顧客満足に直結するため、次の紹介につながりやすい契約となるでしょう。
ちなみに、生命保険信託を販売している保険会社は二社のみですが、その2社しかできないのかというとそうではありません。
ただ、その2社と同じ結果を得るには多少複雑な契約になってしまうのは確かでしょう。
その提案が出来るか出来ないかが、プランナーのバリューに直結すると思います。
(もちろん、上記2社を取り扱うことができる立場にある人はそれに越したことはないと思いますが・・・)
生命保険と信託による遺留分対策
相続財産を特定の相続人に承継させたいというニーズは今も昔も変わらずにあります。
しかし、日本には遺留分の制度があるため全てを一人に相続させる旨の遺言を残したとしても全くその通りに事が進むとは限りません。
そういった場合に、どうしても承継させたくない財産を生前に信託しておき、遺留分対策として保険を活用するプランが有効と思います。
相続財産の規模によって、保険金受取人を相続人とするか被相続人とするかは検討の余地があると思いますが、
そちらにしても、遺留分減殺請求から先祖代々の土地や建物を守るために有効に機能するはずです。
また、追加で保険契約が必要になる事態が生じた場合に備えて、相続税対策をすることを目的として金銭を信託しておく事も出来ます。
そうすることで、財産所持者が高齢になり、意思能力に不安が生じたとしても遺留分減殺請求に耐えることのできる保険契約を追加で交わすことが出来ます。
このように信託契約を保険契約と並行して活用することで、顧客に対して将来の需要も喚起することが出来ますし、
もちろんその場合の契約も同じプランナーさんからという事になります。
販売機会の逸失を防ぐためにも非常に有効です。
ライフプランナーが民事信託を活用すべき理由
これから到来する大相続時代に向け、ライフプランナーさんや保険営業を営む方は、
民事信託を活用しなければなりません。
もっと言うと、信託を活用できないともはや販売機会がなくなる可能性すらあると思います。
少なくとも現時点において生命保険信託くらいは知っておかれるべきです。
生命保険を使うことで、相続財産を金融商品化することが出来ますし、非課税枠の活用など生命保険独自の利点もあります。
そういった中で、顧客の満足を満たそうと考えた場合、もはやそれだけでは足りなくなってきているのも事実です。
多方面の専門家との連携し顧客のニーズを最大限に実現できなければ、競争の激しい保険業界で生きていくことは難しい時代となるでしょう。
信託を理解していることで、お客様に対する提案の幅が大きく広がり、他者と大きな差別化を図ることができます。
相続対策が出来るライフプランナーさんはたくさんいますが、信託を提案できるライフプランナーさんはまだ多くありません。
信託の組成は非常に複雑ですので一人ですることは不可能です。
信託を扱うことのできる専門家がチームを組んで取り組まなければ到底活用することは出来ません。
もしもそのような専門家が近くにいなければ、是非ご連絡いただければと思います。