
現在、日本は超高齢社会に既に突入しています。総人口に対して65才以上の高齢者の割合のことを「高齢率」といいますが、この高齢率が21%を超えると超高齢化社会となります。
高齢率は今後も高くなっていくことは確実で、日本はこの高齢率において世界一といわれています。
超高齢化社会の到来により、年金支給額はますます減少することになり、老後の財産に関する不安は大きくなる一方です。
今回の記事では超高齢化社会のリスクを解消出来る、相続に関するお話をさせて頂きます。
この記事の目次
超高齢化社会における一番の問題点・・・認知症の話
なぜ認知症が問題となるのか?認知症になると財産はどうなってしまうのか?
認知症の話となると、まずは身体的な影響や介護のことなどを考えてしまいますよね?
しかし、実はさらに考えなければならない事項があります。
それは、財産についての事です。
といいますのも、認知症になってしまう事で法律上は、意思表示ができない者となってしまうのです。
意思表示ができないとは、「これを買います。」とか「これを売りたいです。」といったような意思の表示ができないという事です。
そうなると非常に困ったことが起きてしまいます。
例えば不動産を持っている高齢者がいたとしましょう。不動産の価格は最近上昇傾向にありますので今が売り時と感じている方も多いかもしれません。
しかし、所有者が認知症である場合、その所有不動産を売ることは出来ません。なぜなら、「売ります。」という意思表示ができないからです。
法的にはそのように意思表示ができない人の為に、成年後見人制度という制度があります。
成年後見人は意思表示のできない人の代わりに(代理して)意思表示をする人の事です。
しかし、不動産などの重要な財産の処分については裁判所の許可が必要となるため、非常に機動力が乏しい上に裁判所の許可が下りるかどうかも確定ではありません。
そうなりますと、その不動産は実質塩漬け状態となります。
認知症になれば介護の面でも費用が掛かってくることが予想されます。
そこに来て持っていても仕方のない不動産を現金化できないとなりますと、将来の資金計画に狂いが生じる可能性が出てくるわけです。
認知症は対岸の火事ではない!
皆様はこのようなデータがあるのはご存知でしょうか?
引用元:内閣府
これは平成24年に内閣府から発表された認知症に関する資料です。
この資料によりますと、平成24年の段階で65歳以上の高齢者のうち認知症患者が462万人いたとなっております。
この数字を基に今後、認知症患者数がどのように推移するのかの推計がデータとなっているわけです。
これを見ると2020年の東京五輪の年には602万人~631万人が認知症患者であるという事になります。
こんなにもたくさんの認知症患者がいるのか!?という風に思われた方が多いのではないでしょうか?
高齢者の2割弱が認知症であるという事になるのですが、このように数字を見ると、自分だけは関係ないとは言い切れない状況です。
しかし、認知症自体は急になるものではなく、認知能力が徐々に徐々に低下していくものです。
よって、「私はまだ大丈夫。」という感覚の方が多いというのも事実ではないかと思います。
私のところに相談に来られる方々もそのようにおっしゃる方が多いのも事実です。
実際問題、このような直ちにどうこうなってしまう事ではない緊急性のない事柄に関しては、なかなか行動に踏み切れないのは仕方がないのかもしれません。
しかし、気が付いた時には意思能力が一定の基準を下回り、成年後見人選任の申し立てをしなければならないという事態を引き起こしかねません。
そうなれば、前述のとおり財産は凍結され、処分が出来ずに不動産が固定資産税を吸い取るだけの負債のような資産になってしまうのです。
成年後見制度は悪か?
このように書きますと、成年後見制度がまるで悪者のような印象を抱かれるかもしれません。
しかし、そんなことはございません。
実際、何の準備もなく認知症になってしまった方の身上監護は成年後見制度以外に方法がありません。
そういう意味では有意義な制度であることは確かです。
特に、身近に頼れる親族が住んでいないなどの事情がある方であれば、健康状態の急変などの事態に機動的対応する人間が必要ですし、どうしても必要な出費を取り仕切る人間も必要です。
昨今、後見人として就任している専門家後見人(司法書士や弁護士)による本人の財産の横領事件などが報道されたりと、何かと印象が悪くなりがちです。
確かに、専門家後見人が全て誠実であるという保証はありませんが、親族後見人が確実に誠実であるという保証もまたどこにもありません。
誰も周りにいなければ成年後見制度を利用するメリットは大きいと思います。
成年後見制度の弱点をカバーする民事信託
民事信託の特徴
最近、高齢者の財産管理・財産承継を円滑に行うための制度として民事信託という制度が注目を浴びています。(家族信託とも呼ばれています)
NHKの「あさイチ」やフジテレビの「とくダネ」等朝の情報番組で取り上げられたことにより、関心が一気に高まっています。
民事信託が財産管理に非常に有効である点は、先ほど述べたような認知症による財産の凍結を防ぐことができる事です。
簡単に説明しますと、財産の所有者が認知症によって意思表示が出来なくなるまでに、所有している不動産などの財産を次の世代に託します。
信託には「意思凍結機能」があり、当初の信託契約の目的に従って管理処分することについては、本人が認知症になったとしても可能となります。
そうすることで、本来であれば財産の所有者でないとすることが出来ない売却や処分などを、託された息子などからすることが出来るようになるという事です。
認知症がもはや他人事ではないこのような状況下において、この特徴は非常に有効です。
信託後に親の不動産につき、高額の売却案件が出てきたとしても、息子が契約者として認知症になってしまった親の代わりに契約をすることが出来ます。
民事信託を利用せずに認知症になることで生じるリスク。
平均寿命がどんどん長くなっているにもかかわらず、認知症患者の割合は増加しているという事を考えたとき、親の財産が凍結されれしまえば非常に困難な状況に陥ります。
以下では考えられる認知症による財産凍結がもたらすリスクを例示します。
1.実家の空家化に伴うリスク
核家族化が進み親と同居していない人が増えていますが、親が独立して生活が出来なくなった場合、どうしても施設への入居という選択肢は排除できないでしょう。
その時に誰も住まなくなった実家を売ることが出来なければ、実家は空き家となってしまいます。
空家の管理をすることが出来なければ、もしも実家が荒廃し、屋根瓦が落ちるなどしてけが人が出た場合は所有者が賠償責任を負わなければなりません。
2.施設入居費用のリスク1
これも実家で親が独立生活が出来なくなり、施設に入居する際に生じるリスクです。
施設の入居にはまとまったお金が必要になります。
親がある程度現金をためていたとして、そのお金で施設に入居しても月々の費用は掛かってきます。
年金でそれらの月々の費用を賄えるほどの年金収入がある方はかなり少数派ですし、その少数派も今後年金額が保証されるとは限りません。
現状の社会保障財源の急迫事情を鑑みると、期待は出来ないと考えたほうが気が楽でしょう。そうなると実際は預貯金をすり減らしながら運用していくことになります。
その場合には、親が長生きすればするほど子の財産的負担が増えてしまうという残念な結果になってしまいかねません。
3.施設入居費用のリスク2
父親が認知症となり成年後見人が選任されている場合において、母親も自立生活が出来なくなり施設に入居という事になるとまた違ったリスクが生じます。
というのも、成年後見人の第一目的は本人の財産や権利の保護です。本人の財産を本人の為に使うという事以外は後見人としても認めずらいのです。
そうなりますと、専業主婦であった母親が施設に入る場合、配偶者である父親のお金を使って施設の入居費用に充てることは認められないという事が起こりえます。
自ずと、だれがお金を出さなければならないかは決まってきます。
4.賃貸経営のリスク
地主の方などで所有不動産を賃貸して収入を得ている方もおられるかもしれません。
そのような場合、何ら対策をせずに認知症になった場合、所有不動産である建物を解体することも出来なくなります。
近くに大学が出来たならワンルームマンションを建築すれば入居者を確保できるというのは素人でもわかりますが、その素人でもわかる経営判断を実行することが出来ないのです。
民事信託の活用
上記で書かせて頂いたようなリスクは、民事信託を活用することでその全てを回避することが出来ます。
このメディア内でもその様々な方法は書かせて頂いております(下記リンク参照)
【先祖に顔向け信託】先祖代々の資産を相続から守る信託の活用法
民事信託の非常に使い勝手の良い点は本来であれば贈与税を払って贈与しなければできなかった相続対策、財産承継、財産管理が贈与税を払うことなくできるところにあります。
しかも、信託契約の中で遺言と同じように財産を誰が承継すべきかまで定めてしまう事も出来ます。
もっと言いますと、遺言ではすることが出来ない先々の相続人の指定も可能です。
相続のことに関してはもっと自由に、もっとわがままに、もっと賢く、もっと時代に合った承継が信託を活用することで可能となっています。
財産承継まとめ
相続について考える場合、従来であれば民法に従ってその相続処理を考えなければなりませんでした。
しかし、現行民法は明治時代の民放をベースに作られており、時代とあっているかどうかは推して知るべしといわざるを得ません。(近々改正の予定ではありますが)
これから先、時代の変化はどんどん速くなっていくでしょう。それに伴い、財産の活用のカタチも税金の対策方法もどんどん変わっていきます。
これは避けようのない事実です。
このよう不安定な状況下で先々の事予想して全てを円滑に進めることが出来るような方法はありません。
ある意味ではその時代の精神を理解できる世代の者が、時代に合わせてその都度財産の管理方法や活用方法を変化させていかなければなりません。
そういう意味では財産を持つことそれ時代も大変な時代になってきています。
そのような煩わしい財産管理について考えていたのでは、充実したセカンドライフなど実現のしようがありません。
そのような負担、不安、悩みについては、財産を次の世代に託すことで解放されてほしいというのが私の想いです。
そうすることで新たに素晴らしい人生の一歩を踏み出していただくお手伝いをさせて頂きます。
ご興味がある方は一度ご連絡ください!