
民事信託や家族信託という言葉がテレビや雑誌で話題に上る事が多くなっております。
しかし、その内容について理解しておられる方はまだまだ少数派です。
その理由として、いまいちどういう使い方をすべきなのかがわからないという点があげられると思います。
今回は民事信託を活用するべき場面について、事例でわかりやすくご紹介させて頂きます。
ご紹介させて頂くような事例に少しでも当てはまっている方ならば、検討の価値があるという事で良いと思いますので是非ご覧になってください。
この記事の目次
民事信託で奈良の不動産を管理
収益不動産の名義人が高齢である場合
奈良では所有不動産を賃貸して収益を上げておられる方も多いです。
収益不動産経営は傍から見れば不労所得でうらやましいという風に見えるかもしれませんが、内情は色々大変です。
実際問題としてその収入で生活をしていくとなれば空室リスクの事や修繕、改修など家主の頭を悩ませる種はたくさんあります。
そういった中で奈良だけに限ったことではありませんが、不動産のオーナーが高齢化しているという問題が現状としてあります。
そのようなご家庭からのご相談を受けるたびに、法律家の私から見れば「危ないなぁ。」の一言につきます。
実際に不動産を管理したり、管理業者とのやり取りは息子さんがしているのだから、名義人が高齢であったとしても問題ないではないかという風に考える方もいるかもしれません。
しかし、専任媒介契約を不動産業者と締結していたりすると、空室が目立ってきたりした場合になかなか入居者を決めてくれない業者を切りたいと考えることもあるでしょう。
そのような場面で契約の当事者となるのはあくまで不動産の名義人であります。
その時に名義人が認知症にでもなっていたら、ことは一筋縄ではいきません。
意思表示ができる状態になければ、契約ごと一つすることは出来ないからです。
当然、家庭裁判所に後見開始を申し立て、後見人を選んでもらわなければなりません。
後見人には申立時に候補者を立てて申し立てることは出来ますが、100%その候補者で決まるわけではない為、
その後の収益不動産経営は今まで通りに息子さんが表に立ってやっていけるとは限りません。
後見が開始してしまえばお父さんの財産は後見人が細かく管理することになります。
その種駅不動産の収入で生活している家族がいる場合、これまで通りの生活ができるという保証はありません。
というのも、成年後見人は本人の財産の保護を第一義として動くからです。
本人の財産が減ってしまうような選択は基本的にしないのが前提となってきます。
そうなりますと、例えば老朽化しているお父様名義の建物を解体して、新たな建物を建てて収益を最大化したり、相続税の対策をしようとしても出来ないという事になります。
建物を解体するとなると本人の財産は丸々無くなるという事になりますので、後見人としてはそのような契約書にサインすることは出来ないという結論になってしまうからです。
確かに、実際の賃貸経営では老朽化した建物を解体して新たに立て直したほうが入居者も募集しやすく、尚且つ1部屋当たりの単価も高く取れるため有効となる場面が出てきます。
長期的に見れば本人の利益になるのだから良いではないかという考えも出来るはずなのですが、不確実な未来に投資することはリスクも当然生じます。
後見人としてはそのようなリスクは取れないというのが結論になります。
このようなギャップが起こる事を防ぐためには、本人が意思表示できるうちに民事信託契約をしておくべきでしょう。
民事信託契約をするとどうなるか?
上でも書いてきた通り、成年後見が開始すると本人の不動産活用という点では経営的観点から見た投資行為はほぼ出来ないと考えてよいです。
そうなると、収益不動産の大型改修や建て替えなどの必要性が生じても、時すでに遅しとなってしまいます。
そこで、後見が開始する前、すなわち所有者本人がしっかり判断能力を有している間にその不動産を信託しておくことでそのリスクを回避することが可能になります。
例えば、信託契約として不動産賃貸経営の安定化を目的として収益不動産の管理、処分、担保設定などの権限を受託者に与えたとしましょう。
信託契約を締結することで、不動産の所有名義は受託者である息子に移転します。
しかし、純粋に息子名義になるのではなく、不動産の管理・処分・収益という要素の中から管理と処分のみの権限が息子に移転するのです。
収益の権限は受益者である父のもとに残っており、いわば不動産に関するおいしい部分(収益性)のみが父のもので、
しんどい部分(管理・処分)が息子のもとに移転するのです。
因みに、子の受益者を父以外の者にする事も出来ますが、その場合は贈与税が課されてしまいますので注意が必要です。
逆に言えば、受益者が父であれば贈与税は課されませんし、税務上受託者である息子に不動産取得税が課されることもありません。
これにより、管理・処分の権限は息子のものとなりますので、息子が自己の名前で不動産賃貸経営に関する様々な契約ごとをこなしていけるようになります。
もちろん、老朽化した建物の取り壊しから底地に対する担保設定を伴う借入、新しい建物建築の契約も息子が自己の権限をもって行うことが可能です。
しかも、それは父親がその後に認知症になり、後見が開始しても変わりはありません。
仮に後見が開始したとしても、収益部分だけは父のものですので介護費用等にそのお金を充てる事も出来ます。
あとは後見人がそのお金が減らないように管理してくれるという事です。
民事信託で奈良の地元産業を活性化
中小企業の事業承継を民事信託を用いて解決!
平成24年度の統計では日本国内の企業法人は170万社という結果が出ております。
個人事業主やペーパーカンパニーを合わせると400万社との事です。
これらの企業はそのほとんどが中小零細と呼ばれるものです。
そして、当然といえば当然ですが、経営者の年齢は高齢化が進んでおります。
ペーパーカンパニーは横に置いておいたとして、実際に活動をしている会社や個人事業主については、
いつかは事業承継の必要が生じてきます。
そういった場合に実際の業務の部分についての承継は、後継者の教育を現場でしてもらう以外にないのでしょうが、
株式の部分では方法論は何通りかあります。
そのすべてを説明することはそれ自体で膨大な情報量になるのでしませんが、最終的に株式を後継者に譲るという部分では皆同じ事です。
では、何故株式を後継者に譲るのかというと、会社の所有権とは株式の事だからです。
所有者は自分の所有物をどのようにしていくかを決める権限を持っており、株主総会にて会社の方針について決定をしていくという事になります。
では、株主が認知症になってしまうと、株主総会はどうなってしまうのでしょうか?
実は株主総会は株主が自分の意思表示を議決権という形で表明する場ですから、総会は開けないという事になってしまいます。
速やかに後見開始を申し立て、株主権の行使を代理できる状態にする必要があると思います。
しかし、だれを取締役にするかなど、個々の事案について後見人が思惑通りの権利行使をするかどうかという事は保証できるものではありません。
最終的に息子が会社を承継するというのであれば、父親が認知症になった場合に株主権の行使が外部の人間によってされる事態はリスクでしかありません。
そこで、民事信託を活用することによりそういった状況を総合的に解決していくことが出来るのです。
会社株式を信託するとどうなるか?
不動産を信託する場合と同じですが、財産を信託した場合にはその信託財産の名義上の所有者は受託者(信託された人)になります。
しかし、受託者に移転する権利は管理や処分の権限に限られ、収益する権限は委託者に残ったままです。
通常、株式を譲渡する場合はその算定額が大きくなってしまうこともあり、膨大な贈与税が課税されることもあります。
ですので、退職金を出して損金を計上したりあの手この手で株価を下げて承継するという努力がされています。
それもこれも全て、速やかな事業承継をするために行われることです。
そこで考えて頂きたいのは、会社の、特に中小企業の株式において何が一番重要化という事です。
それは会社に対する支配権に他ならないと思います。
その会社の方針を思い通りに決めることができるか否か、その一転こそ経営者一族にとっては重要なのだと考えたとき、
その株式のもつ収益する権利はさほど重要ではありません。
不動産と同じく、会社株式も税務としては受益権(収益権)に対して課税するというスタンスをとっています。
という事は株式の収益権である、配当を受け取る権利や売却した時のその売却金を受け取る権利さえ父親に残しておけば、
株式の持つ非常に重要な機能である議決権は息子に渡してしまっても課税はされないという事です。
一般的に生前に贈与する場合と亡くなってから相続する場合とでは税率としては贈与のほうが高くつきます。
ですので、会社経営者の方が株式を承継する際には生前の贈与は行わず、相続まで待つ傾向があるのが現状です。
そこで、認知症の問題が出てきたときにリスクが顕在化することになるわけですから、事前に信託しておけば何も問題はないはずです。
株式を信託することによって、株式の持つ最大のメリットである議決権を息子に譲り、税金面も気にすることなく事業承継が可能になるのです。
後継者は受託者として株式の議決権を行使し、自己を株主総会で取締役に選任し、会社を安定して運営していくことに注力できるようになります。
民事信託活用法の注意点とまとめ
信託を活用することで非常に流動的かつ包括的な権限移譲、財産承継が可能になります。
もちろん、そこには先々まで想定した絵を描く必要があり、その絵が稚拙なものであったり、
不可抗力により叶わなくなってしまったりした時に税務上も権限上も大きなリスクがあります。
そういったことを避けるため、複数の専門家がタッグを組み、当事者の思いを聞き取ったうえで信託契約を作り上げていかなければなりません。
そうなると専門家に対する報酬は必要にはなりますが、その報酬に見合うだけの効果、特にその他のやり方では叶わなかった結果を得ることができるわけです。
奈良で民事信託を手掛ける専門家はほとんどおりません。知り合いの方からの紹介などで依頼した専門家が信託を手掛けることが出来るという可能性は皆無です。
財産承継や事業承継でお悩みの方は一度ご相談ください。周りの方々が頭を悩ませている問題でもあなただけは一発解決という事になると思います。