
どうも、司法書士城田です。
散髪に行けず落ち武者みたいになってきています。
身だしなみにはもう少し気を使わないとと反省しています。
さて、昨今、保険制度の確立や核家族化の進行によって、
人と人との繋がりというのはどんどん希薄になっていっております。
人と人とのつながりが希薄になると、相続問題においても不可解な事が発生します。
今回はそういった事について書いていきたいと思います。
笑う相続人
お前誰やねん!恐怖の笑う相続人
設定的には前回の続きになるのですが、仮に子供を残さずに天寿を全うした場合、
その財産は親が既に亡くなっていることと配偶者がいない事を前提にすると、
兄弟姉妹が相続することになります。
そして兄弟姉妹もすでに亡くなっていた場合は、兄弟姉妹の子供が相続します。
今回の記事の題名は知らない人に財産が取られるとなっています。
「兄弟の子供なら知っているぞ!」となるかも知れませんが、
歳を重ねるごとに会う機会というのはなくなってきますよね。
今街で見かけてもすぐにはわからないという事もあるのではないでしょうか?
それにその兄弟の子供が亡くなればその財産の半分は兄弟の子の配偶者に承継されるわけです。
もはや自分の遺伝子とはかけ離れたところに行ってしまいます。
同性婚の場合
こういった事がどういう場合に問題になるかというと、同性愛者のカップルのケースです。
日本の法律においては同性同士では法律婚は出来ません。
事実婚状態になるわけです。
日本の法律は法律婚を重視しますから、(最近では非嫡出子の相続分等、
緩和されてきておりますが)事実婚の配偶者には相続分は認められません。
同性愛者ですから、当然養子でも取らなければ子供は存在しない訳です。
そうなって参りますと、亡くなった人との実際の繋がりとしては非常に濃い繋がりがあるはずの事実上の同性配偶者は、
何一つ相続することは出来ず、ほとんど会う事さえなくなっていた兄弟や、その子供がすべてを相続するという事になるわけです。
こういった状態を笑う相続人問題と言います。
生前に介護等の貢献を全くしていないものが相続人として財産だけはすべて承継するのです。
特別縁故者にはなれない
前回の記事で相続人がいない場合の特別縁故者の事について書かせていただきました。
同性愛者の場合、亡くなられた方と同居をし、その療養看護に勤めていた等の事情があれば、
特別縁故者として名乗り出たとしても裁判所に認められる事もあるでしょう。
しかし、特別縁故者が財産を引き継ぐ事ができる場合は、
亡くなられた方に相続人が全くいないときに限られます。
と言う事はパートナーに兄弟がいた場合などは、配偶者と何ら変わらない貢献をしていたとしても、
それだけでは財産の承継は出来ないのです。
仮にパートナーと同居していた家がパートナー名義であった場合、
その後も継続してその家に住み続ける事はできないと言う事になります。
なぜならその家はパートナーの兄弟が相続によって取得するからです。
そうなってしまいますと、自身に生活力が無い場合などは、
最悪の場合、路頭に迷う事になるでしょう。
では、そういった事を避ける為に事前に対策ができないのか?
と言う話が出てきそうですよね?
もちろん、生前に対策をするのであれば方法はあります。それについて今からご説明致します。
遺言のススメ
対策として一番手っ取り早いのはやはり遺言の作成です。
遺言の中で全財産についてパートナーに遺贈する旨を表明しておく事で、
仮に、パートナーが亡くなってパートナーに兄弟がいた場合でも、
財産の全てについて承継する事が可能となります。
もし、読んでいただいている方の中に過去の記事も全て読ん戴いている方がおられた場合、
疑問に思われる方も居るかもしれません。
それは「遺留分があるからすべての財産を遺言で承継させることは出来ないのでは?」という疑問です。
関連記事 知らないあなたは損をする!?本当は怖い遺留分のお話し
確かに遺留分という制度は存在し、「遺留分を有する」相続人は、
それを主張することで確実に一定量の財産は承継できます。
しかし、遺留分の記事でも書かせていただきましたが、
遺留分の制度というのは相続財産を生活の糧とする必要のある人を保護する制度です。
ですので、兄弟姉妹というのはそもそも自立して生活をするべき人達ですから、
遺留分は法律上認められていないのです。
今回の同性愛カップルのケースで言えば、亡くなった方の財産を生活の糧としたいのは、
パートナーの方に他なりません。
それなのに遺留分制度の影響でその方の生活が脅かされることとなっては本末転倒です。
養子縁組の活用
同性婚の場合、二人は気持ち的には夫婦でしょうから、抵抗を感じる方もおられるのかもしれませんが、
予め養子縁組をしておくという対策も考えられます。
まとめ
遺言の他にも、少々トリッキーですが、民事信託という手法を使えば、
遺言とは違ったアプローチで目当ての人に財産を残すことも出来ます。
ただ、民事信託を使うのも遺言を使うのも、
当然ながら相続が開始する前でないと意味がありません。
すべての相続に共通する事ですが、発生する前に対策をしなければ、
税金面でも取得割合の面でも納得のいく結果にならないでしょう。
そして、争いが起きてしまう可能性も非常に高くなります。
自分の死後の事について考えることは確かに気分の良いものではありませんが、
本当に大切な人を守るために責任を全うするのも、人としての尊厳だと思います。