
今日は遺留分について書いていきます。
皆様も自分や親の相続に関しては、色々考えるところがあるのではないでしょうか?
遺留分減殺という制度について3つの要素に分けてご説明したいと思います。
この記事の目次
遺留分とは?
先ずご説明しておいた方がいいでしょう。
残された家族は生活が出来なくなってしまいます。
そのような不都合を回避するために、民法では最低限相続できる財産を遺留分として保証しているのです。
遺留分を有する相続人は、配偶者、子供、父母です。
を受け継ぐことが出来なかった人が、遺留分の侵害された部分に関しては、
もらい過ぎの人から返してもらう事が出来るのです。
1.遺留分の基礎となる財産
遺留分減殺の基礎となる財産とは、遺留分という分数の分母の事です。
先程も申し上げた通り、遺留分とは分数であります。
遺留分を主張できるものは、ある総数に対して一定の割合の遺留分を主張できる訳です。
その「総数」はどういった基準により決められるのかという問題があります。
普通に考えると、被相続人が死亡時に所有していた財産という風に考えてしますかも知れませんが、
そうではありません。
遺留分の基礎となる財産は、被相続人が死亡した時に所有していた財産に、
過去になされた贈与財産の額を加えた額から負債の額をひいた額が遺留分減殺の基礎となります。
具体的には以下の4種類の贈与等です。
- 被相続人の死亡から遡り、一年内にされた贈与
- 被相続人の死亡から遡り、一年以上前にされた贈与で、
かつ、贈与者と受贈者が遺留分を害する事を知ってされた贈与 - 相続人の一部が受けた特別受益
(時期を問わず、遺留分の侵害につき知っていたかどうかも問わない) - 当事者双方が遺留分を害する目的でなされた不相当な対価による売買
(贈与に等しいような売買の事)
これらの贈与や売買を被相続人の死亡時の財産に組み入れた額に対して、
遺留分権者は分数の割合で権利を主張することが出来ます。
ですので、遺言を書く際にはその点も踏まえたうえで全相続人の取得割合について、
考えていく必要が生じます。
2.遺留分減殺の順序
遺留分減殺請求をする場合には、減殺の対象とする財産について法律で減殺の順序が決められています。
一体なんのこっちゃ?と思われるかもしれませんが、要するにこういうことです。
先程遺留分減殺の順序という形で遺留分減殺が出来る贈与の事について書きました。
しかし、生前の贈与とは別に遺言にて誰かに遺贈をしている場合がありえます。
例えば、亡くなられた方が財産を生前に愛人に贈与してしまったり、
遺言で愛人の子供に遺贈してしまったりしている場合、
生前の贈与と遺言での遺贈はどちらでも任意に減殺できるのでしょうか?という問題です。
これらの問題については法律にて順番が決められています。
- 贈与と遺贈がある場合
贈与は遺贈を減殺したうえでないと減殺請求出来ません。
贈与は時間的に遺贈よりも過去の出来事です。
心情的に愛人から返してもらいたいと思っても、過去の事よりも今の事から処理しなければならないのです。 - 数個の遺贈がある場合
遺贈はその目的の価格に応じて減殺する。
受贈者の中に気に食わない人物がいても、まんべんなく減殺しなければなりません。
ただし、遺言者が減殺の順番を指定している場合はその順番に従います。 - 数個の贈与がある場合
数個の贈与がある場合は、後の贈与から順次、過去にさかのぼってしなければなりません。
なるべく、過去の事をほじくり返すのは避けましょうということです。
受贈者からすると寝耳に水ですからね。
このように、遺留分減殺請求は強力な権利ですが、減殺請求を受ける側に対しても、
一定の配慮が法律によりなされています。
では、遺留分減殺請求はどの様にして行使すればよいのでしょうか?
その点につき、3つ目の要素として以下に書いていきます。
3.遺留分減殺請求の方法
価格弁償による遺留分減殺
財産と一言で言っても、その財産の内容は様々です。
遺留分はあくまで割合(分数)ですから、
対象がお金であれば、問題なく分けることが出来るでしょう。
しかし、実際には不動産や動産も相続財産の中には混じってきます。
では、仮に不動産に対して遺留分減殺を主張したとしましょう。
遺留分は割合に応じたものですから、不動産の所有権の一部を返還してもらうという事になります。
では、明日からこの不動産は僕と君の二人のもの。
といっても、うまくいくはずがありません。
遺留分減殺請求をする時点で、大概の場合、当事者間の関係は険悪である事の方が多いでしょう。
そういった事態を避けるために、遺留分権者は、遺留分減殺請求の対象となる財産の
持分に相当する金銭で返還してくださいと主張することが出来ます。
逆に、返す側においても、受け継いだ不動産を生活の拠点としているなど、お金で解決したい場合
も大いにあります。
ですので、返還する側から、「お金で勘弁して下さい。」という事も出来ます。
その場合は、遺留分権利者がOKすれば、お金での返還という事になります。
遺留分減殺請求訴訟
人間というものは、いったん自分の手元に入ってきたものを返すとなると、
口惜しい気分になってしまいがちです。
それが、仮にもらい過ぎていたもので、本来返さなくてはならないものであった
としてもです。
遺留分減殺請求は必ずしも裁判で請求しなければならないということはありません。
裁判外でする場合でも、後日の紛争に備えて内容証明郵便を使うのが一般的ですが、
実体的にはその旨の意思表示をすれば効力が生じます。
(のちに証明できるかは別問題ですが・・・)
しかし、遺留分減殺の請求をしたとしても、相手が任意に払ってくれるとは限りません。
それどころか、返還する義務はないと言ってきたりすることもあるでしょう。
そういった場合に遺留分を返還してもらおうとするなら、裁判所にて遺留分減殺請求訴訟を起こす
しかないのでしょうか?
実は、もう一つやり方があります。それは家庭裁判所に対して調停を申し立てるという方法です。
裁判と調停は一体何が違うのかといいますと、裁判は遺留分について、お互いの主張をぶつけ合い、
まさに争っていきます。
それに対して調停は問題の解決、合意に向けて、裁判所が間に入って話し合い、
お互いの意見を調整しつつ妥協点を見出す手続きです。
遺留分減殺請求訴訟の当事者は、血縁関係にある事も多いため、
戦って決着をつけるよりも、話し合いで解決するほうが望ましい場合も多々あります。
ですので、どちらを選ぶかはケースバイケースでしょう。
ちなみに、訴訟において価格弁償をしたい場合は、遺留分義務者(もらい過ぎている人)から主張することになります。
遺留分義務者が価格弁償を欲していないにもかかわらず、遺留分権利者(返してもらう人)
のほうから金銭弁償の請求をすることは出来ません。
遺留分減殺による不動産の共有は避けましょう
原則はあくまで現物を返してもらう権利であります。
遺留分は割合の権利ですから、結果的に財産の共有状態生じることになります。
不動産の共有持分を買ってくれる人は、その不動産がよっぽど魅力的でない限りそうはいません。
しかも、遺留分減殺請求にて生じた共有状態は、基本的には仲がこじれた者同士の共有です。
何かにつけてお互いの意思を確認して進めなければなりません。
という事は、仲がこじれているという事実は、管理にも収益にも支障が出る訳です。
通常、共有の解消をする場合は、まず、当事者で解決方法を協議するのが普通でしょう。
ただ、話し合いが出来ればそもそもさほど問題はない訳で、訴訟により共有物解消を求めることになるでしょう。
裁判において共有状態の解消をする場合、裁判所は、これを一方の所有にして他方に適宜な代償金を支払わせるとか、
一方の所有にすることが適当でないときは競売に付して代金を持分に応じて分けるとか、
種々の方法により共有状態を解消することになります。
遺留分についてのまとめ
先程から執拗に「仲がこじれて話し合いが出来なくなる」とか、
「話し合いが出来ない場合は訴訟しかない」などと書き連ねてきました。
実際問題として、相続が生じた場合、相続人の間の関係性が普段からしっかりと出来ている一家であれば、
揉めることはありません。
普段のコミュニケーションがしっかりと取れていれば、
一時の欲に惑わされて不条理な要求をしたいという欲求にも歯止めがかかるものです。
現状の民法は明治時代に制定された後、多くの部分が当時のまま手つかずで今日に至っております。
要するに、時代には合ってないのです。
遺留分減殺請求に関しても、お金を稼ぐ能力を持たない子供や女性が、
理不尽に打ち捨てられるような事があってはならないために作られた法律です。
しかし、今日では女性も相当に強くなっていますし、
愛人や妾に全財産をあげてしまうなどという人はほとんどいません。
むしろ、遺留分制度が悪用されて、親の世話をほとんどしてこなかった不良が、
(倫理的に見れば)不当な金額の財産を無理やりに相続するというようなケースの方が目立ちます。
民法は近いうちに改正が予定されていますが、その改正民放案では遺留分制度は見直されることとなりそうです。
しかし、改正がされるまでは現状に合ってないといえども、現状の法律が適用されますので、
読者の皆様に置かれましては、親兄弟とのコミュニケーションだけは取っておいていただきたいですね。