司法書士が教える借金問題解決の方法【後編】

司法書士の城田です。
いよいよ今年も残すところあと僅かになって参
りました。皆様、疲れておられませんでしょうか。
私は忘年会の波間を漂う流木ののように枯はてております。
しかし、疲れようが倒れようが、悲しいかな借
金は減りません。
というか、むしろ疲れて仕事を休んでしまった
りすれば減るどころか増えてしまう事すらある
のがつらいところです。
人間は一日中働きつつける事は出来ませんが、
利息は年中無休24時間営業で増えていきます。
大晦日であろうが元旦であろうが容赦はありま
せん。
もしかすると、この文章を読んでおられる方の
中には、もう返すことのできない額まで債務が
膨れ上がっている方も居るかも知れません。
今回は、債務整理の方法として、破産手続きに
ついて書いていきたいと思います。
この記事の目次
破産手続きの特徴
債務は全額免責される
破産手続きとその他の手続き大きな違いは、破
産の場合は債務は一切チャラになるという事で
す。これを法律の用語で免責されると言います。
チャラになるのであれば、前回にご紹介した個
人再生よりも破産をするほうがおいしいではな
いかと思う人もおられるかもしれません。
しかし、世の中そんなに甘くありません。前回
でも書かせていただきました通り、破産をする
と色々なペナルティがあります。そのペナルテ
ィとメリットをよく天秤にかけて判断する必要
があるでしょう。
また、大いに注意しなければならないのは、保
証人の有無です。ご自身の負債は破産手続きが
順調に進めば、免責されることになります。
しかし、借入時に保証人を立てた場合、保証人
の責任は免責されません。
借金を作った張本人が普通に生活して、直接お
金を借りたわけではない人が過酷な状況になる
のでは、不満がない訳はありません。
多くはトラブルに発展するでしょう。ですので、
保証人を立てている場合には、破産手続きを進
める前に相談することをお勧めいたします。
同時廃止と管財事件
破産手続きには2種類の道筋があります。それ
が、同時廃止と管財事件の2つです。
同時廃止とと管財事件の違いを大きく言います
と、財産の有無です。破産申し立て当時に、申
立人に何らかの財産(例えば、家や車など)が
ある場合は、それらはすべて処分され、お金に
変えたうえで各債権者に分配しなければ公平で
はありません。このように財産を分配する必要
がある事件を管財事件といいます。
一方、個人の破産手続きにおいては、ほとんど
の場合、同時廃止手続きになります。
この手続きは、申立人にめぼしい財産がなく、
債権者への分配手続きが生じないパターンです。
この場合、手続きは管財事件に比べて非常にシ
ンプルですので、時間も管財事件ほどはかかり
ません。
裁判官の裁量
破産をすると借金がチャラになると申し上げま
した。しかし、実は厳密にいうと破産しても借
金がチャラにならない場合もあります。
例えば、借金の原因がギャンブルや浪費であっ
た場合などです。しかし、多重債務に陥るとい
う事はギャンブルや浪費がかかわっている場合
が非常に多いです。
では、破産できる人は殆ど居ないではないか!
という話になりそうですが、実は厳密にギャン
ブルや浪費があれば即ダメ。というわけではあ
りません。
個々のケースに応じて裁判官の裁量で、ギャン
ブルや浪費の理由に釈明の余地が認められる場
合などでは免責が認められます。
あくまで裁量ですので、こういった場合は破産
出来て、こういった場合は出来ないという事は
なかなか断言しづらいのです。
ですので、破産を専門家に相談する場合は、な
るべく包み隠さずに、全てを打ち明けて頂かな
いことには、後で大きなしっぺ返しを食らいま
すので注意が必要です。
破産後の世界
残すことが出来る財産
破産をすると、生活に必要最小限の財産を除き、
財産は原則債権者に分配されてしまいます。
この生活に必要最小限の財産の事を法律では自
財産と呼びます。
自由財産の要件は
①生活に必要な家財道具
②20万円以下の財産
です。
しかし、生活に必要な家財道具といいましても、
様々ですし、地域性も考慮に入れるべきです。
非常に高性能のテレビがあったとして、日常生
活にそれが必要かというと必要ではないかも知
れません。しかし、売りさばくのにも費用がか
かってきますので、処分したところで債権者に
分配できるほどは残らないという事もあり得ま
す。ですので、実際処分されてしまう事はあり
ません。専門家と話しながら、そこらへんの事
は経過を見守るしかありません。
ブラックリスト
破産をするとおでこに「破産者」と刺青を入れ
られる。などという事は全くなく、通常、はた
目にはわかりません。ただ、「信用情報機関」
なる機関がありその機関が、個人の信用情報を
記録しています。
破産をするとこの信用情報機関が記録する、信
用情報に乗ってしまいます。信用情報は誰でも
彼でも閲覧することが出来るわけではありませ
ん。しかし、金融機関はこの信用情報を各社共
有しています。これが俗に言うところの「金融
ブラック」です。
金融ブラックリストに載ってしまいますと、新
しくカードを作る事や、住宅ローンを組むこと
は出来なくなってしまいます。
どの程度の期間制限されるのかは、一般的には
5年から10年くらいと言われています。
住まいはどうなってしまうのか
賃貸不動産で住んでいる方がよく、破産すると
今の家を出て行かなければならなくなるなどと
心配されている事があるのですが、そんな事は
ありません。しかし、住宅を持っている場合は、
その家は破産時には手放さなくてはなりません。
という事は、別の場所で賃貸を探さなくてはな
りません。
最近では、賃貸不動産を借りる場合、家賃の滞納
が起こる場合に備えて、家賃保証会社との保証契
約を締結することが、入居の条件になっている事
が多いです。上で書きましたブラックリストの話
をぶり返すことになるのですが、破産をしてい
る場合家賃保証会社の審査が通らないという事態
は起こりえます。
この辺りは、破産のデメリットとしても非常に大
きなものと言えるでしょう。
最後に
債務整理に関する法律知識や、手続きについて、3
回にわたって投稿いたしましたが、参考になった
でしょうか?
どの手続きにおいても、結果的には借りた者勝ち
のように思ってしまいがちですが、これらはあく
までも、どうしようもなくなってしまった人への
救済策である事を忘れてはなりません。
悪意をもって計画的に破産をするとなると、その
事が明るみに出た場合、自分の首を絞めることに
なりますので、そのような事は無いように、そし
てなるべくなら、借入も返済の計画をしっかりと
立ててするべきだと思います。
これらの手続きを利用する人が少ない社会ほど、
成熟した社会だと私は思います。