
どうも、司法書士の城田です。
以下の表は平成20年度社会福祉行政業務報告内の図を参照させていただいております。
平成20年度の時点で、日本には42000人以上の被虐待児がおります。
そのような状況の中で、少子高齢化が同時に進んでいるのが今の日本の現状です。
本日の記事では、そのような日本の課題を踏まえたうえで、現行の養子縁組の制度について知っていただきたいと思います。
養子縁組とは?
養子縁組とは、血縁上の親子関係がない者の間に、法的な親子関係を作出する法的な手続きです。
養子縁組をすることによって、養親と養子の間には実の親子と変わることない法的な繋がりが発生します。
養子縁組は孫を祖父母の養子に入れるなど、相続税対策に使われることも非常に多いですし、
男子の生まれなかった家庭の家の存続のために使われることもあります。
しかし、昨今では育児放棄や虐待を受けた児童と里親との親子関係を創出する為に使用することが多くなっているようです。
以下では、養子縁組の現行の法律についてご説明していきたいと思います。
養子縁組の要件
以下から、出来ない縁組と第三者の許可がなければ出来ない縁組について紹介していきます。
法的にすることが出来ない養子縁組
未成年を養親とする縁組(民法792条)
成年に達しなければ養親となる養子縁組をすることは出来ません。
法的な親子関係が発生するということは、扶養の義務も生じるという事になります。
実際問題として、養子縁組をしたはよいが扶養が出来なければ意味がありません。
それに未成年がそういったことまで考えて手続きをする能力があるとは限りません。
そういた観点から未成年者保護のためにこのような規制があります。
尊属または年長者を養子とする縁組(民法793条)
成年に達すれば養子縁組が可能であるとしても、養子縁組はあくまで法的な親子関係を創出するものです。
自己の祖父などの尊属や自分より年上の者を子とする縁組は、親子関係を創出するという趣旨からしても、
少し頓珍漢なことになります。
そういった縁組をさせない為に規制が設けられています。
特定の者の許可がないと出来ない養子縁組
後見人が被後見人を養子とする養子縁組(民法794条)
成年後見人や未成年後見人という立場の方がこの世にはおられます。
未成年や事理弁識能力に著しい不足のある人を代理する立場にある人です。
こういった後見人の立場にある者が、未成年や被後見人の養親となる縁組をするには、
家庭裁判所の許可が必要になります。
その理由は、後見人がその立場を利用してみ成年被後見人や被後見人の財産について、
不当な干渉をすることを防ぐためです。
通常、被後見人は後見人に対してあらゆる意味で依存し、支配下に置かれやすい関係下にあります。
そのような関係を利用して不適切な処理を行うといったことはあってはなりませんが、
実際は自分の目の届く範囲に財産が有れば、自分の好きなようにしたいと考える人は一定数います。
そのような縁組を絶対的に禁止することは弊害になりかねませんが、家庭裁判所の許可を義務付けることで不当な縁組を防ぐことが出来ます。
配偶者のある者が未成年を養子とする養子縁組(民法795条)
養子縁組は相続対策など、様々な用途で利用されます。
しかし、大原則は養子の保護です。
その意味では、まだ自立が出来ていない未成年を養子とする縁組がなされた場合、
その未成年が養子縁組によって不利益になることは避けなければなりません。
未成年に対しては父と母が共同して保護してあげるのが、片方のみが保護するよりも良いに決まっています。
そういった意味では配偶者のある者が未成年者を養子とする場合は、夫婦が揃って養親となってあげなければ、
養子の保護は完璧とは言えません。
民法第795条では配偶者のある者が未成年を養子とする縁組をする場合は、配偶者の嫡出子を養子とする場合を除き、
共同で縁組をしなければなりません。
配偶者のある者が縁組をする場合(民法796条)
配偶者のある者が養子になったり養親になる場合は、
配偶者の同意を得なければすることが出来ません。
ただし、配偶者と共に縁組する場合や、
配偶者が認知症などにより意思を表示できない時はこの限りではありません。
これは自分の身になって考えていただくと当然と感じれるかもしれません。
自分の夫や妻が何の相談もなしに誰かを養子にしたり、誰かの養子になってきたら気分が悪いですよね?
夫婦間に実子もいるのに養子をとれば、実施の相続分は減ってしまいますし、
誰かの養子になればその人に対する介護の問題も出てくる可能性があります。
そのような事態を避けるためにこういった規定が置かれています。
養子となるものが15歳未満であるときの養子縁組(民法797条)
養子となるものが15歳未満であるときは、その法定代理人(通常は父母)が、
これに代わって縁組を承諾できます。
一般的な法律行為(契約行為など)をする能力の事を行為能力といいますが、
行為能力は成年に達するまで付与されません。
ただし、養子になるという行為に関しては15歳以上であれば意思表示をすることが出来るという事です。
15歳未満となると、さすがに縁組の意味やその後どうなるかという事の判断は出来かねるだろうという法律の配慮がうかがえます。
未成年者を養子とする縁組(民法798条)
未成年者を養子とする縁組をする場合は、家庭裁判所の許可を得なければなりません。
この規定は未成年を人身売買的な養子縁組から守るための規定であるとされています。
養子縁組の制度は子の福祉を最大の利益と考えている為、未成年の縁組については、
厳格な要件を科すことでその権利を守ろうという趣旨です。
養子縁組の種類(普通養子縁組と特別養子縁組)
養子縁組には、普通養子縁組と特別養子縁組という二種類の形態があります。
それらはそれぞれに特徴があり、御幣を恐れずに言えばメリットもデメリットもあります。
本来は民法には普通養子縁組の制度しかなかったのですが、1973年に発覚した菊田医師事件をきっかけに、
特別養子縁組の制度が創設されました。
菊田医師事件についての詳しい記述は割愛させていただくとして、特別養子縁組制度は、
子の権利を保護する為に設けられた規定であることは間違いありません。
普通養子縁組との一番の違いは、家庭裁判所に申し立てる必要があるという事です。
家庭裁判所の許可が必要という事ではなく、申立先が家庭裁判所という事です。
以下にその違いを書いていきます。
①目的
普通養子縁組は現在、家の存続や相続税対策を目的として使用されることが多く、
契約型の手続きであります。
それに対して特別養子縁組は、実の親が子供を養育していくことが子供にとって弊害がある場合などの場合に、
子の福祉を目的として利用することを前提としています。
②養子の年齢
普通養子縁組では養子の年齢については、上で述べたように養親より年少であること以外に制限はありません。
それに対して、特別養子縁組の場合は申し立ての時点で、養子が6歳未満である必要があります。
但し、6歳未満から実質的に養親となる者が養育していた場合は8歳未満であれば申し立てることが出来ます。
③養親の年齢
普通養子縁組であれば、成年に達すれば養親になることが出来ます。
それに対して特別養子縁組の場合は、婚姻している夫婦で、一人が25歳以上、
もう一方が20歳以上でないと養親となることは出来ません。
④実親との関係
普通養子縁組では実親との関係は終了せず、実親と養親の双方が親となる。
その為、相続関係についても実親と養親の双方を相続することになります。
その一方で特別養子縁組の場合は、実親との親子関係は失われ、養親のみが親となります。
相続関係も養親のみを相続します。
⑤戸籍の表記
普通養子縁組をした場合の戸籍の表記は、実親との関係が継続される関係上、
実親と養親の双方が親として記載されることになります。
養親の戸籍には「養子」と記載されます。
しかし、特別養子縁組の場合は親としては養親のみが記載され、
「養子」ではなく、「長男」とか「長女」など実子と同じ文言で記載されます。
⑥離縁
普通養子縁組は養親と養子の双方の同意があれば離縁することが可能です。
(養子が15歳未満の場合は、養子の法定代理人が意思表示します。)
特別養子縁組の場合は、原則として離縁することが出来ません。
但し、養親の虐待などが確認できる場合には一定の者から離縁の請求が出来ます。
このように、普通養子縁組と特別養子縁組では非常に大きな違いがあり、
制度を利用する上ではしかるべき知識を有する専門家の意見を参考にすることをお勧めいたします。
まとめ
養子縁組と一言に申しましても、上記の二つの制度に分かれており、
その利用には十分な倫理観や理念を持って臨む必要があります。
少子化問題ががさけばれて久しいですが、私の印象では、子供をしっかりと養育できる基盤を待つと晩婚になり、
子供を得る機会に恵まれない可能性が高くなり、無計画になるとネグレクト等の問題が生じやすいという気がいたします。
(あくまで印象、傾向であり絶対ではありませんが・・・)
そのような中で、社会全体として、未来の礎である子供たちを育てていくという意識は非常に重要になると思います。
その一つの方法論として、養子縁組制度がますます身近なものとなっていくには、
一人一人の制度に対する理解が進むことが重要だと感じ、今回の記事を書かせていただきました。
一人でも多くの子供が輝ける未来を創るべく、専門家としてもより一層の努力をしていきたいと思います。